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社会教育主事さんたちへブックトークの紹介 「宮澤賢治の世界」

今年3月に後志管内社会教育主事等研修会というのがあって、
学校図書館の活用について知りたいということで
町の図書館としてどう学校図書館を支援しているかを、具体的に色々紹介しました。
その中で、授業の中で行うブックトークについても紹介したのですが、ブックトークについて聞いたことがない、という方がほとんどでしたので、イメージを持ってもらうために、授業で行っているものを少しコンパクトにして実演しました。

2019.2 生涯学習と読書活動 ブックトーク紹介 宮澤賢治
 ブックトークというのは、本のコマーシャルなんです。
テーマに沿って複数の本を一つのストーリーとしてつなげて紹介することで本への興味を引き出す方法としてとても有効なものです。
今学校では、読む力を付けるということで、教科書単元に関連した並行読書というのをよくやるんですね。その時にただ関連する本を教室に置くというだけではなく、読むことへの動機付けとしてブックトークをその教科で行っています。
光村の6年生の国語に、作者宮澤賢治の生き方や考え方を知って作品を味わうという単元があり、教科書では作品として「やまなし」、賢治の生き方について「イーハトーブの夢」という賢治を研究している人の文章が出ています。そこで教科書を進めながら、子ども達に賢治のいろんな作品に触れさせたいという担任の依頼でブックトークをしています。実際には授業時間いっぱい使った長いものですが、今日は20分くらいのダイジェスト版で、こんな感じというのを紹介してみようと思います。

ブックトークシナリオは
宮澤賢治さんは、今では日本では知らない人はいないんじゃないかというくらい有名な作家さんですが、
生きている間に出した本は詩集と童話集それぞれ1冊のみでした。
「注文の多い料理店」 がその一冊ですが、これは学校の先生時代に出しました。


この童話集で初めてイーハトーヴと言う言葉が出てきました。
「注文の多い料理店」というタイトルの上にイーハトーヴ物語、と書いてあったんですね。
イーハトーヴという言葉について賢治さんはその広告文の中でこういっています

著者の心の中に実在したドリームランドで日本岩手県である。そこではあらゆる事が可能で一瞬にして空を飛んだりアリと語ったりする事が出来る。
そんなファンタジーの世界である岩手のドリームランドでのお話にはどんなものがあるかと言うと
この童話に賢治さんは9つのお話をおさめました。
そのうち8つは絵本になっています。こちらです。どのお話にも不思議が起こります。

"
もう一つは何かと言うと「からすの北斗七星」。これは平和を願う童話なんですね。賢治さんの時代、シベリア出兵があって日本が兵隊さんをロシアに送っていたという様な社会情勢の中生まれた物語だと思います。みなさん平和や戦争について調べましたよね。第二次世界大戦で学生さん達までもが兵士として戦う事になって沢山の若い命が亡くなってしまったんだけれども戦後彼らが残した日記とか手紙をまとめた「きけわだつみの声」という本がでました。

この中で佐々木八郎さんという方が、「からすの北斗七星について書いているんです。
主人公のカラスの台詞について
「本当の意味での人間としての勇敢さ、強さがこれほどはっきりと現れている情景が他にあるだろうか。
「僕の気持ちは宮澤賢治の鳥と同じ様なものなのだ。憎まなくていい者を憎みたくない。」
と書いています。
このかたは特攻隊、調べた人いますか?それで22歳でなくなってしまったそうですが、子供だけでなく色んな人が色んな時代に、色んな場面で心の支えとなる様なものが賢治さんの童話にはあるんですね。
どんなお話なのか読んでみてくださいね。

皆さんがこれから読む
「やまなし」冒頭をちょっとよんでみます。
小さな谷川の〜「それならなぜ殺された」
これもいきなりわからない会話から始まってますね。クラムボンって何なんでしょう。
この「やまなし」の謎を解いていく女の子が主人公の物語がこちら

引っ込み思案な花ちゃんという女の子の朗読を通した成長物語です。今回「やまなし」を読む部分が1巻2巻におさめられています
朗読は、ただ声を出すと言う事ではなくて、作品のイメージを映像として浮かべる事が出来るまで何度も読み込まないとできないものなんです。
花ちゃんは「クラムボン」「かぷかぷ」のなぞ、兄弟の年齢はどれくらいか、
沢ガニの子どもは1センチ、人間の子どもが1メートルとしたら、つぶつぶとした泡は5ミリくらいでも1センチの蟹の兄弟から見たら100倍、つまり50センチの大きな球体にみえること、沢ガニのいる川が30センチくらいの深さなら、かにの兄弟が見る「天井」の水面は高さ30メートルの高い高い天井である事、等を読み解いていきます。
自分では気づけない「やまなし」の発見がきっとたくさんあるとおもいますよ。

これはぜひ先生にお勧め。
恋とかちょっと背伸びしたい人も読めるかもしれません。私はするすると読んですごく面白かったです

宮澤賢治には抹消された秘密の恋があったのではないか。どんな恋をだれとしていたのか推理小説のように、彼の詩や童話を読み解いている本で、「やまなし」のクラムポンについて、ちょうど作品が発表されたのが賢治さんが両思いの女性との恋がおわった時期と重なっていて、笑ってたクラムポンが、死んでしまったよ、となるそれは彼の恋の始まりと終わりの意味も含めているのかもしれません、ということだったらどうでしょうか。

この本を書いた澤口たまみさんが、賢治さん自分の恋の顛末を童話にしたのではないかと書いているのがこちら

この物語はかなりコミカルに描かれています。
賢治さんは東京に何度も行ってて、行くたびに浅草喜劇を見に行ってたんだって。今で言うお笑い好きでもあったんですね。
ですから、喜劇風に仕上げられたお話もいくつかあるし劇の脚本とかも書いて生徒に演じさせた事もあるんですよ。

お話は、旧式の信号機と新式の信号機との激しい恋心が描かれます。この信号機は列車のための信号機です
旧式と新式なので家柄の違う2人の恋、という展開で、どんどん先走る2人の台詞が、まあ面白い、やり過ぎでしょ、っていうくらいです。

数少ない恋愛もののもう一つ紹介しましょう

こちらは、恋をした時の見栄、苦しみや嫉妬、ねたみそういう他の人には隠したい様な気持ちをぐっと取り出してみせた物語です。
 狐と土神どちらも樺の木のことが好きなのですが、狐は樺の木に星とか芸術についてとかとっても知的でロマンチックな会話をするんです。それをたまたま聞いてしまった土神は狐に比べ自分が劣る様な気持ちになり心の中がぐちゃぐちゃになってしまいます。
「土神は、頭の毛をかきむしりながら草をころげまわりました。それから大声でなきました。その声は時でもない雷のように空へいって野原中へ聞こえたのです。土神は泣いて泣いて疲れて、明け方ぼんやり自分のほこらに戻りました。」
この物語ラストは衝撃です。よみおわってもそこから抜け出せないような感覚になります。

賢治さんの先生時代のびっくりエピソードほんとに色んな本に残されてるの。
それらのエピソードをうまく繋いで食をテーマに賢治さんを描いた漫画があるので今日はそれを紹介しますね

ここに出てくるエピソードは、賢治さんがとってもユーモアがあって、茶目っ気もあって、親切で、情熱的で、というような親しみやすい面をたくさん見せてくれてます。
教科書に書かれている事だけではなくて生徒達にとっては自分たちを楽しませてくれる大好きな先生だったっていう事を知ると、皆さんにとってもちょっと賢治さんが身近に感じられるんじゃないかな

ただ賢治さんの生きた時代と今の時代の生活様式が変わりすぎて、物語に出てくる情景をイメージするのが難しくなっている、ということがあります。
それを助けてくれるのがこの本。

「やまなし」で一番最初に出てくる「幻灯」 「やまなし」
「クラムボン」についてもいろんな説が紹介されています。
賢治さんのお気に入りの服、これは鹿革の陣羽織の長い裾をきって袖にして仕立て直したもの出そうです。賢治さんはこだわりのおしゃれをしていたそうですよ。
教科書にこんな写真がのっていましたが、これは賢治さんが大好きなベートーベンをまねて、撮った写真ですね。コスプレですよね。
賢治さんは音楽が大好きで特にベートーベン大好きで、その頃お給料の多くをレコードに使っちゃったそうです。東京でお笑い劇見るの大好きだったり、地元のレコード屋さんでレコード買い占めるくらい買ったり、好きなことに対してはすごく貪欲な若者だよね。

東京にチェロを習いにいった事もあります。有名な先生に強引に頼み込んで教えてもらったそうですよ。
この時の経験が生きたんじゃないかなあと思うのが、教科書でも紹介されていました

ゴーシュのように賢治さんも練習していたのかもしれません。
皆さんは東日本大震災の事をギリギリ記憶にあるでしょうか。
東日本大震災の後、多くの人々の心に響いて、そのとき東北を思う人たちの間ですごく広がった賢治さんの書いた文章があります。話題となって新聞にものりました
こんな文章です。朗読(アメニモマケズ 一部分)
これは賢治さんは37歳でなくなった後、賢治さんのトランクの中から発見された1冊の黒い手帳に書かれていました。  教科書にもその写真がのっていますがその手帖の表紙はこんな手帖

この手帳は本物そっくりに描いてあるんですよ。
この版画絵本を作った小林敏也さんも、宮沢賢治に惹かれて賢治の絵本シリーズの制作をライフワーク、自分の一生をかけた仕事、として続けている人です。アトリエの名前も「ドングリとやまねこ」という作品から名前をとった山猫アトリエ。賢治さんの大ファンですね。
この本作りがこっていて、イーハトーブの地図がここにあり、物語の主人公達いっぱいいますよ。みなさんこれから、賢治作品色々読んだ後で、絵探ししてみてください。上の方に「行って」と赤で書いてありますが、実際手帖にもそう書いてあって、これは賢治さんが実際にそこに行って行動する、という事を大切にしたいという気持ちなのではないかと思います。誰かのために自分がそこに行って行動したいってところが、震災の時に被災地を思う人たちの心に響いたんですね。
「雨にもまけず」というのはタイトルではありません。文章の始まりです。
これは、賢治さんがどこかに発表しようとして書いたものではなくて、その時の自分の思いを書いたものではないかと言われています。 
これを書いたのは35歳の時、病気になって、家で寝たり起きたりの生活をしているときです。
みんなが、もし健康じゃなくて、学校にほとんど来れない様な状態だったら、どんな願いを持つでしょうか。

この文章の最後に、法華経のお題目が書かれています。

賢治さんは法華経という宗教の教えをとても大事にしていて彼の童話にも色濃く出ています。それは
「人の苦しみや喜びを自分のものとし、自分を捨てて、人のために尽くせば、本当の幸せを得ることができる。命あるもの、人も動物も植物も全て仲間。どんな命も大切にしなければなりません」
というものです。
命あるものみな兄弟、という考え方だと、人が生きるために動物の命をとる、ということの矛盾にどういう答えを出したら良いのでしょうか。賢治さんは肉食をしない、という時期が時々あります。
私たち、豚肉食べるよね。食べるために飼育されている豚の視点から描いた物語です

豚が農学校の生徒や先生達の会話から、自分の運命の恐ろしさに胸がいっぱいになる様子が語られていきます
豚を殺すにはその家畜から承諾書にはんこをもらわなくては行けないのですが、畜産学の教師のこんな声が聞こえてきます

「もう明日だって明後日だって、いいんだから。早く承諾書をとれぁいいんだ。
・・・それからやる前の日には、何にも資料をやらんでくれ」

その後の豚の思い乱れる気持ち(承諾書というのは何の承諾書だろう、いったい何をしろというのだ。やる前の日には、なんにも飼料をやっちゃいけない、やる前の日って何だろう。いったい何をされるんだろう)
豚の混乱して恐怖に怯える気持ちが胸に迫る物語です。
他の命を取らなければ生きていけないと言うこの苦しみは
「よたかの星」にえがかれます。

よだかは醜いために、どの鳥からも馬鹿にされていました。ある日、鷹に名前がおれに似ているなんて許せない、名前を市蔵とかえてみんなの所をお辞儀してまわれ。できなかったら殺すぞと言われてしまいます。よだかは虫等を食べる鳥です。飛び立ちその大きく開けた口へ虫が入り、
「ああ、沢山の虫が僕に殺される〜」遠い所へ行ってしまおうと決心します。
よだかの悲しみが伝わってくる物語です
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