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Top Page › あ行の作家 › 『月まで三キロ』伊与原新
2020-01-14 (Tue)  19:48

『月まで三キロ』伊与原新


☆☆☆☆
内容(「BOOK」データベースより)
月は一年に三・八センチずつ、地球から離れていってるんですよ」。死に場所を探してタクシーに乗った男を、運転手は山奥へと誘う。―月まで三キロ。「実はわたし、一三八億年前に生まれたんだ」。妻を亡くした男が営む食堂で毎夜定食を頼む女性が、小学生の娘に伝えたかったこと。―エイリアンの食堂。「僕ら火山学者は、できるだけ細かく、山を刻むんです」。姑の誕生日に家を出て、ひとりで山に登った主婦。出会った研究者に触発され、ある決意をする―。―山を刻む。折れそうな心に寄り添う六つの物語。

うまく行かない人生に、追いつめられ身動きとれなくなってしまった
人たちが科学に魅せられた人と出会い、光をともされるような物語
「月まで三キロ」
大手の広告代理店につとめ、結婚して、新築マンションを買い、
給与や役職が自分には低すぎると、独立を目指して、半年後には開業できると目処がついたそのタイミングでリーマンショック。反対を押し切り開業。4年目を待たず倒産、離婚 残ったのは七千万を超える借金
実家に戻りスーパーで働き始めたが、母が急逝。その後父も認知症に
そんな彼が死に場所を求めて乗ったタクシーの運転手は、天文好きな元教師で、大きな悲しみを抱えて生きる人だった。
そして運転手が満月の夜必ず来るという場所へ

「子育てって、月に似てると思うんですよ。親が地球で、子どもが月。」

月は1年に3.8センチずつ地球から遠ざかっている。月と地球が生まれて間もない頃は今の距離の半分以下。地球から見える月の大きさは今の六倍以上。
赤ん坊の月は地球のそばにいてくるくる回る。色んな顔を見せる。時が立ち地球から離れると余り回らなくなって、地球には見せない顔を持つようになる。

「乗り越えられない悲しみというのが、この世にはあるんですねえ」
「なんであの子が死ななきゃならなかったのか。あの子が何を考えていたのか。私はあの子に何をしてやればよかったのか。いったいぜんたい、何が正解だったのか。」
(p38)

大切な子どもが、心を閉ざして月のように離れていって、心を見せなくなって

月の科学的な話が、こんな物語になるなんて。

どれもよかった。
「星六花」
来年40になる寂しさを抱える独身女性が出会ったのは気象オタクの岸本さん。

「アンモナイトの探し方」
憧れの中高一貫の学校に進学をしたいと考えていた少年
両親が別居し、父親と住んだら、その学校へ進学出来るかも、な状況
夏休み円形脱毛症となり母の実家のある北海道へ。出会ったのは元博物館館長の戸川。

「わかるための鍵は常に、わからないことの中にある。その鍵を見つけるためには、まず、何がわからないのかを知らなければならない。つまり、わかるとわからないを、きちんとわけるんだ」(P110)

「何年、何十年かけてでもさんざんやってみて、それでもダメなら、ここはダメだということがわかる。」
(p120)

「科学に限らず、うまくいくことだけを選んでいけるほど、物事は単純ではない。まずは手を動かすことだ」(p120)

『天王寺ハイエイタス』
笹野かまぼこ店の長男の優は京大から院に進み博士号をとり、アメリカ留学、今はつくばの国立環境研究所。
父の兄、哲おじさんは昔プロのギタリスト。40歳の時三度目の結婚をし娘も出来たが浮気問題で離婚。
健(たける)は友人から、兄の優が哲に何十万か入った封筒を渡していたのを見た、と

哲おじさんはしょうもない人だけれど、何とも魅力のある人で
それが、ミステリの鍵
これ、すきだな

『エイリアンの食堂』
謙介の店に毎晩通ってくるようになった40くらいの女性。
小学4年生の娘の鈴花は気になってしょうがない。宇宙人じゃないかって。
彼女は短期で様々な研究所に雇われて素粒子物理学の研究をしている

「体の原子のほとんどは、長くて数年で入れ替わる。死んだら槌谷空気に還っていく。今私の中にある水素は、昔拿捕かの誰かが使っていた水素かもしれない。私が使っていた水素は、きっといつか他の生き物が使う。わたしが死んだ後も、繰り返し繰り返し、ずっと」(p207)
「水素ここにもある」?手をのばす鈴花。彼女の母親は小さい時に乳がんで死んでしまった。

『山を刻む』
義父、義母、定年を迎えた夫、娘、息子
専業主婦を一生懸命やってきた私
お母さんみたいにはなりたくないと娘に言われている
一人登山に来て、火山研究の先生と生徒の二人と出会う
好きな事を研究して幸せそうな先生と、その先生を慕う学生。
私が若い時、なりたかったのは山岳写真家

「うちの先生はこの日光白根山のホームドクターみたいなもんです。噴火史とか噴火のクセを誰よりよく知ってる。で『メスで人間を刻むかわりに、ハンマーで山を刻め。火山の医者になって、何十万、何百万の人々の命を救うんだ』って、一人で盛り上がっちゃって」(p243)

「人生というルートの分岐点は、始めから地図の上にあるのではない。人との偶然の出会いが、気まぐれにそこに分岐を作るのだ」(p246)

家族の望むままの主婦だった女性が、自分の望む事に家族を巻き込もうと踏み出す、すごく勇気がいるけど夢がある。
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最終更新日 : 2020-01-14

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