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2020-02-03 (Mon)  19:04

『オオカミが来た朝』ジュディス・クラーク


☆☆☆+
内容紹介
「オオカミが来た朝」
1935年。父親を亡くした少年ケニー・シンクレアは、家族のために学校をやめて仕事を探すことになった。折しも大恐慌の時代、内気で自信のないケニーは不安でいっぱいだった。寒い冬の朝、自転車で出かけようとするケニーに、母親はある約束をさせる。

「メイおばさん」
1957年。ケニーの二人の娘、クライティとフランシスはけんかばかりしている。ある日一家のもとに、年老いたメイおばさんがやってくる。夜中にソーセージを焼いたり、亡くなった親友を訪ねにいこうとしたりと、おかしな言動を繰り返すおばさんに、娘たちは振りまわされるが……。

「字の読めない少女」
1954年~1959年。3年生になったフランシスの前に、年上の大柄な少女ボニーが立ちはだかる。いやがらせばかりするのでみんなから嫌われているボニーは、その後何年も同じ学年を繰り返し、フランシスと6年生で同じクラスになった。ボニーは字が読めなかった。

「想い出のディルクシャ」
1975年。シンクレア家の近くに、ウガンダから難を逃れてやってきたインド人一家が住んでいる。その子どもたち、カンティとラージ兄弟は、学校の先生や同級生、近所の人々の無理解や差別に苦しんでいた。ある日カンティは、いつもあたたかく見守ってくれるケニーの前で泣き出してしまう。

「冬のイチジク」
1991年。フランシスは結婚して、夫と3歳の息子とともにイスラエルに住んでいる。人々は、近づいてくる戦争の気配におびえながら暮らしていた。そんなある日、息子のガブリエルが、季節はずれのイチジクをねだる。いつも日曜日に買い物に出かけていた、アラブ人の市場にならあるはずだというのだが……。

「チョコレート・アイシング」
2002年。クライティの孫のジェイムズに聞こえてくる「いやな音」、それは両親がけんかをしてどなりあう声だった。幼い弟のデイビーには「いやな音」を聞かせたくないと奮闘するジェイムズの前に、ある晩、自転車に乗った少年があらわれる。

1935年14歳のケニーから始まり2002年ひ孫のジェイムズ11歳まで。
物語が続いているのではなくそれぞれの時代の一家の周りにあった家族のひとときの物語。

上質の物語。
今の子ども達の多くが、表紙も楽しい学園物や恋愛ものばかりに向うので
こういったちょっと暗そうな印象の本は分が悪い。
けれど
とてもいい

一話目のケニーが主人公の物語、表題にもなった作品。このタイトルにはちょっと文学的で
ケニーが学校で習って暗唱させられた詩の一節から

「アッシリア人は羊の群れをおそうオオカミのごとくやってきた。」
・・・イスラエル王国を征服しようとしたアッシリアの王の軍隊が、神の み使いによって一夜に大敗したという旧約聖書の記述を元にした詩

この詩が少年の足を捕まえた流れ者らしい男のなにを捉えたのかは私にはわからないままなのだけれど
多分、その詩によって、危機を脱したことか、自分が生きてること、ために冷静になろうとしたこと
必ず生きて家の台所に入る、と。

大事な事は生きてるってことだ

父の突然の死で、一家の窮状がまだ14歳のケニーにかかってしまった日、
大恐慌時代の冬の朝、大人の男達も仕事にあぶれる中、一人仕事を見つけにいく寒さと不安。


ケニーの娘フランシス、眠る前の儀式が辞められない。色んな事が不安で寝る前のお祈りの言葉が増えていく。
誰にも離せないその事を話した相手はメイおばさん。メイおばさんは認知症で聞いた事はすぐ忘れてしまうだろうから。
フランシスはメイおばさんによってたった一言で眠れるようになる
フランシスと姉のクライティの姉妹けんか
メイおばさんが何度も死んでしまった友だちのエセルに会いにいこうとするのを、彼女は死んだと言えなくて
今はお店になっているエセルの家が会った所で、姉妹がつくうその優しさ

  

フランシスの通う学校にいる乱暴でいじわるなボニー・クーニー
文字が読めない
何度も落第している
ある日フランシスはボニーが大人だが障害で身の回りの事も話す事もできないケビンに文字を教えていたのを見てそのあまりの意外さ、衝撃でなぜかボニーの家を見たくなり出かけていく。
そこで見た光景に混乱するフランシス。
二年後、エリート校に進学したフランシスは学校の帰りに寄った巨大スーパーのアクセサリー売り場で店員となっていたボニーと再会。
『商品に手を触れないで下さい、と書いてあるのが読めないの?」と言われたことで言い返しトラブルになり主任がやってくる。フランシスのエリート学校の制服を見て微笑む主任。何か言えばボニーは解雇される
ボニーの瞳の不安さを見たフランシスは「友だちなんです」と
前に見たボニーの家の暮らしの様子が貧困によるものである事の気付きと思い出し。

1975年
移民の兄弟カンティとラージ
ウガンダでインド系の移民が追放された時、医者をしていた父は捉えられ、母と逃げた列車の中での妹と離ればなれになってしまったことのひどい記憶。

地球の裏側で起こった事、と関心がない、ああいう所では始終もめている、と批難がましい文句を並べる人たち。

列車に乗るのは仕事に行くとか町に買い物をしたり映画を見たりするためで、命がけで逃げるためじゃない

あんな事は絶対に起こらないと思っている

「あんな人たち」と思ったら最後、その人たちに何の価値も存在もなくなり、その人たちには何をしてもいいことになる。カンパラではカンティの家族が「あんな人たち」だった


この兄弟の心の奥にしまわれた列車での恐怖、悲しみが、辛くて涙がでる
それを当たり前にわからないだろう私のいる今はまだ平和な社会を思う

1991年
湾岸戦争勃発のこの時フランシスはイスラエルにいる。
イスラエルで出会ったネーサンと結婚し4歳の息子ガブリエルとともに。
平和運動に熱心なフランシス。
夫は招集されていてガブリエルと二人。
ガブリエルはいつも行っていたアラブ人の市場でイチジクを買いたい、とごねる
今にも戦争が始まりそうなのに

妹のことが心配のあまり走り出す姉のクライティ
いつの間にか公園で聴こえてくるのは高校生のくったくのない笑い声

「どうして笑っていられるの?こんな時に?
世界で何が起きているか知らないの?戦争が近づいているのを知らないの?
湾岸に巨大な灰色の艦隊が集合している写真を見てないの?」



けれど突然自分が13歳だった頃を思い出す
時は1956年、冷戦時代。新聞に「戦争」の文字。
けれどそれを目にしても見なかったように、おしゃべりをつづけ男の子のうわさ話をしていたあの頃。

「あの子たち、この戦争の事は知っている。でも考えたくないんだわ」


2002年
11歳のジェイムズは不安で一杯
父と母が、夜中にけんかを始めて聴こえてくる音に。何か起こったらと。
6歳の弟にこんな思いをさせたくないと、耳栓をさせたり。


歴史や社会問題を背景に
どの時代の少年少女達も不安や葛藤、あるいは悲しみを抱えながら
乗り越え、希望をたぐり寄せていく

カンティとラージの一家に起こった事は胸が痛くて
それを乗り越えようとする
その苦しい苦しい溺れそうな海から
そんな一家に光が見える事に少しだけほっとしながらも、
やっぱり胸が痛い
どこかでそんな家族がいるだろうから。
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最終更新日 : 2020-02-03

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