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『花のにおう町』安房直子


☆☆☆+
秋のはじめいっせいに咲き匂うキンモクセイの精を描く表題作のほか「小鳥とばら」「黄色いスカーフ」「ふしぎな文房具屋」「秋の音」「ききょうの娘」を収めた花の童話集。
現実の世界から、ほんとにふっとファンタジーの世界に踏み入って
どうなるんだろうと
読者を飽きさせない
異世界転生ものとか、ライトノベルでもよくあるけれど
安房直子作品のは、どこかにある伝説を読むような落ち着きがある

「小鳥とばら」
よその家の生け垣の中に飛んでしまったバトミントンの羽をさがしに
小さな破れから中に入った少女。見つけた、と思ったら、それは急に小鳥になって庭の奥へ。
追いかけると銃声がきこえて青いセーターを着て青いズボンをはいた少年が現れる。
小鳥をつかんで
「一緒に食べるかい?この鳥、母さんがパイに入れてくれるから」
少年について森を抜け・・

魔女がいるんじゃないかとかちょっとドキドキする。

森を抜けて少年の家で
パイ生地に薔薇の花びらを敷き詰め、その上に死んだ小鳥をおき、薔薇の花びらで小鳥をおおうと、少年の母親はそれをもう一枚のパイの皮でおおい、パイを焼く。
薔薇とバターの匂い
パイの中には小鳥の姿はなく、やわらかい鶏肉があるだけ

この後ちょっと怖い展開に
母親の魔法でこのまま眠ったらばらの木に変えられてしまうと少年に教えられるのだ。

不思議な世界での色や匂いがリアルに立ち上がってくる

「黄色いスカーフ」
タンスにしまっていた黄色いスカーフを持って散歩にでかけたおばあさん
「ひろげてひろげて」と声が聞こえて講演の草の上に広げると
オレンジとホットケーキが出てきたり
「むすんでむすんで」というので桜の木に結ぶと黄ばらの匂いがして小さい頃母親に連れられてきたバラ園にきているような気持ちになったり
小さい時買ってもらったカナリアを思い出すと、数えきれない程のカナリアが集まってきたり

「花のにおう町」
信は最近オレンジ色の自伝者にのってる少女達を見る
秋になって甘い花のにおいがたちこめる。
信は女の子達を追いかける。

金木犀の匂いだったんだなあ。それが女の子達の自転車

「ふしぎな文房具屋」
本物の花の匂いがする鉛筆や書いたものが本物のように見えるクレヨンや、壁の向こう側が見える虫眼鏡・・・
なんでも消える消しゴムは、悲しみも消す事が出来る
猫が死んでしまった女の子の悲しみも。

「秋の音」
耳がきこえづらくなってしまったおばあさん能登頃に届いた荷物はクルミが三つ
そのばん「あけてあけて」とクルミから。一つ割ると出てきたのはハーモニカ
そっとふくときこえてきたのは山の風の音
二つ目のクルミからはハープ
ツメではじくと、金色の音がこぼれて秋の日にままごとをした遠い日を思い出す
3つ目のクルミから飛び出したのはタンバリン
そっとふると、空の☆が一度に降ってくるような音。
「ききょうの娘」
大工の新吉に嫁さんが来た。新吉の母親は山で一人くらしをして、家を飛び出したひとり息子の事ばかり考え、娘をよこしたのだという。働き者で料理もおいしく、不思議なお椀で出される。このお椀を粗末にすると私は山へ帰らなくてはならなくなる」といわれたのに
新吉は「たまには海のものを食べたいとか山のものはいつもじゃ飽きる」といい「新しいお椀を買おう」と言ってしまう。
娘はいなくなってしまい、探しにいった新吉に
「このお椀はあげましょう。あんたがもっと立派な大工になって山へ帰ってくるまで山のごちそうがでてくるようにしてあげましょう。だからかならずかえってきてくださいよ」
娘は母が大好きな紫の桔梗の花の精だった

昔話のようにどこかへいっておしまい、じゃない
帰ってきてってその言葉で
新吉はがんばれるだろう
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