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『秘密のノート』ジョー・コットリル


☆☆☆☆
モノマネが得意な少女の成長物語

クラス一のお調子者ジェリーは、人のモノマネが得意で、いつも先生のモノマネをしてクラスメートを爆笑させていた。
そんなジェリーの悩みは、トドのような太った体型。男の子たちからは毎日のように、からかわれたり悪口を言われたりするが、いつもギャグでかわして、笑い飛ばしていた。
でも、家に帰ると、本当の気持ちをノートに書き付けていた。
この秘密のノートにつづった詩が、真のジェリーの姿だ。

学校恒例のタレントショーで、ジェリーは代表となり、コントを披露することになる。今年こそ優勝間違いなしと噂されるが、いつもの悪ふざけが過ぎて、出場できなくなってしまった。

そんなとき、母親の新しい恋人のミュージシャンと知り合うことで、ジェリーの中で、少しずつ変化していく。

ジェリーは、タレントショーに出場できるのか?
少女の心の成長を描く爽やかな学園物語。


底抜けに明るい女の子だけれど
自分のコンプレックスを隠す事に必死で
心に抱えているものは重たい
原書のカバーイラストはそれを良く表していて
女の子がJellyにつぶれそうになってる。
Jellyにはびくびくするって意味もあるらしく
確かにこの子は不安に耐えてる。
笑いを取る事でかわしながら。

日本版はなんだか可愛い感じのイラストで、
女の子の「秘密」の重さは伝わらない。
ジェリーの明るさ、強さをメインに出したのかな。
サッカーが得意で足も速い人気者のジェリー

ジェリーは11歳。
ジェリーの親友は、カイマとサンヴィ
カイマはジェリーの物まねを素直におもしろがるけれど
サンヴィは
「ひょっとしてモノマネで傷つく人っていない?」とちょっと不安げだ。
ジェリーは学校が好きで友だちともうまくいって、みんなを笑わせるのも好きなのに
学校から帰るといつも心は疲れてる
本当は自分の太った体が恥ずかしくてたまらない。
それをごまかすのに、笑いをとる選択をしているのだ
誰にも嫌われずに乗り切るために。

そっとピンクの秘密のノートに心の内を
詩に書いている。
書く事は心の中を整理するにも
自分を見つめるためにも
とても有効。
以前読んだシャロン・クリーチの「あの犬が好き」でも
傷ついた少年の心が学校で詩を書く事で
解放されて、悲しみから次へ進む少年の成長の過程が描かれていたけれど、
学校で詩を書く授業って多いのかな。
でも色んな子のいる教室で自分の心をさらけ出すのは勇気がいるなあ。
この物語でも「私の仮面」というテーマで
詩を書く授業があるのだけれど
ジェリーに自分の心の内の恐怖や怒りを打ち明ける勇気はない。
学校で、みんなに、という場面ではちょっと残酷
ジェリーのようにごまかしたって責められない
でも、学校で
詩の書き方や沢山の詩に触れる機会が多いとプライベートで力になることは多いかも

ジェリーはママとの二人暮らし
ママは化粧品の通販会社をやっていて
体に気をつけて緑茶を飲み
とってもスリムで
毎朝ヨガをやって
一目を引く美女
このママ、自分はすごく食べものに気を使っているのに
ジェリーにはジェリーの大好きな
甘いお菓子をたっぷり用意する。
若いんだから、今のうちに好きなだけ食べておきなさい、って。
クラスの子にセイウチって言われる程太っちゃった娘にそれはどうなんだろう
とは思うし、
ジェリーが嫌な気持ちになるのも当然だよというような
しょうもないボーイフレンドに入れこんで
夜のデートにでかけたり
ジェリーが学校から帰り着く時間に彼といて
ジェリーが外で時間をつぶさなきゃとそっと出て行くような
そんな男はダメでしょうと
ため息ものの母親ではあるのだけれど
彼女が娘を愛しているのは確実だし
ジェリーにとっても彼氏のこと以外は最高のママ
そういうことも
ママの自己評価の低さのせいなんだなあと読んでいくうちに気がつく。
ダメ彼氏の後に素敵な彼氏ができるのだけれど
自分には何の取り柄もないから
あんなにいい人が自分を好きでい続けるわけがないと
自分から別れてしまったり。
支配的で男が偉いという自分が正しくて、妻や娘を見下して支配してきたのが
ママの父親。ジェリーのおじいちゃん。
ママはいまでもおじいちゃんとおばあちゃんが来る、というだけで
緊張して馬鹿にされても反発出来なくて黙ってる。
自分で事業を経営してちゃんと働いている女性なのに。
そんなママが新しくつきあいだしたシンガーのレノンは今までの人とは全然違って
ジェリーにもとてもいい友だちとなる。
ジェリーの初めての生理の日、ようやく帰り着いた家で
ママは仕事の電話中
レノンの対応がとても良くて
ジェリーの心の不安に気がつき気遣うレノンにママにも秘密の詩のノートを見せたら
言葉のセンスをすごくほめられて
彼がその詩に曲をつけたいと言い出して。

これがわたし?これがあなた?これでいいの?
まるでクモの巣のように
うそをびっしりはりめぐらせる
どうか瞳を見られませんように
心の奥をのぞかれませんように

ジョークを飛ばして人を笑わせ
落ち込んでるなんて思わせない
いやなことは全部心の奥に閉じ込めて
悲しいことなんてないふりをする

だって、わたしは明るいピエロ
顔で笑って心で泣いて
わたしが笑えば、みんなが笑う

笑いの仮面をはずしても
あなたはそばにいてくれる?
友だちでいてくれる?
嫌いにならない?

毎日楽しいことばかり
悩みなんてひとつもない
何をいわれたって傷つかない
そう自分にいいきかせる

だって、わたしは明るいピエロ
顔で笑って心で泣いて
私が笑えば、みんなが笑う


その出来上がった歌をレノンが歌うのを聞いてママは感動して涙を流すのだけど

いってしまいたかった。
毎日楽しいことばかりで、悩みなんかひとつもないふりをしているのは、このわたしだった。ほんとうはそうじゃないのに。外見で判断されるのが頭にきているくせに、ひどいことをいわれながら、怒れない自分。そして何よりも、ほんとうの気持ちを知られるのが恐くて、ピエロの役をおりられない自分がいやだった。
 でもそれはいえない。ママにだって。
 わたしのそういう気持ちをレノンはわかっている
(P194)

ジェリーは学校で行われるタレントショーに友だちとコントでて優勝を狙っている。
ところがレノンは、そこで、詩を発表するべきだと言う
ジェリーの詩をほめ、彼女のものの見方、感受性の豊かさをすごいといい、それを知らせるべきだと。
レノンに協力してもらいレノンが作ってくれた自分の歌を歌う事を決意するが・・

レノンは人の中身を見る人
ジェリーの良さを発見したり
ママの良さも美しい外見じゃなくて「こんなに美しい魂の持ち主にあったことがない」なんて表現するし。

多様性についても当たり前に感じさせるところがいい
ピクニックに3人で出かけた時、ママがジェリーは人気者でつきあう男性は選び放題よ、なんていうのに
「あるいは女性」とさっとレノンが答えたり
サンディ達とファッション雑誌を見て
サンディが「インド系の女性はあんまりいない」とか
カイマは「黒人もあんまりいない」
ジェリーは「肥満体はゼロ」とさりげない会話の中に同性愛への偏見や人種差別について
さらっと言及されてて、そう言う感じもいい。
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