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『キャラメル色のわたし』シャロン・M・ドレイパー


☆☆☆☆
黒人のパパと白人のママが離婚し、イザベラは1週間ごとに両親の家を行き来する生活を続けている。イザベラは家族について、アイデンティティについて悩む。ピアノの演奏会の日、黒人の兄とともに警官に拘束され、銃を向けられてしまう。
鈴木出版の「この地球を生きる子どもたち」のシリーズはいつもいい。
黒人の社会を子供たちの目を通して描いた作品の
ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ (海外文学コレクション)でも
警官に押さえつけられ、銃を向けられるシーンが描かれる。
10代の子どもを押さえつけ、銃を向け発砲してしまう、ということが
現実の世界でもおきているので
銃社会の問題とか、差別、黒人を恐れる気持ちの強さ、
何代にも渡って作られた
心の問題は
少しずつ、お互いを理解し合うことを積み重ねていくしかないのだろうと思いつつ
こういう児童文学を読んで気づくのは
差別をされる側にいるということを物心つくようになってから日常のあちこちで感じさせられる
子供たちの心と、育てる親の心
建前上平等を詠うアメリカで、違う、白人より気を付けなくてはならない事を知ったり教えたりしなくてはいけないということの辛さ

主人公のイザベラは、白人のママと黒人のママの間に生まれた11歳の少女
両親が離婚
「共同親権」の制度で二人交代で養育しなければならず
イザベラは1週間ずつパパとママの家を行ったり来たり。
「パパの家に行く」「ママの家に行く」という感覚で自分の家がなくなってしまった感じ
パパもママもイザベラを愛していて
もちろんイザベラもどっちも大好きで
心の底では元通りにならないかなあと思いながらも
パパの彼女アナスタシア、ママの彼氏ジョンはとてもいい人達で、アナスタシアの息子のダレンはかっこいい
みんなイザベラを愛してくれるから、余計に心は落ち着かないし
だけど受け渡しの日は大嫌い
環境が変わらないのは、学校だけ
そんな学校で事件が起きる
友だちのイマーニのロッカーのコート掛けぶら下がっていた「首つり縄」
警察が呼ばれ翌日学校は休みになり・・
首縄は人種差別の象徴に使われていて
イマーニの両親が人種平等のための活動をしているために脅されたのでは、という可能性

イザベラのパパは町で一番大きい銀行の顧問弁護士
そういう活動に多額の寄付をしているが目を付けられないように名前は伏せているとか
彼がどんなときもきっちりスーツを着ている理由は
有色人種への偏見がある現実ではそれが重要だと思っているから、とか
黒人は他の人達より沢山監視されている事とか
そういう事を父親の言葉で知らされるイザベラ

1人称で語られるイザベラの語りは
いきいきしていて素直で、ピアノが大好きで、思いやりのある女の子であることが伺える
その子の目を通して、日常のちょっとした差別を感じていくこことが
ママが白人である事(絶対監視されない、リラックスした格好を自由にしている)の比較とともに
とても丁寧に描かれていて
恐ろしいラストのシーンに繋がっていく

この事件はBlack Lives Matte事件としてトップニュースとなるのだけれど
日本で去年大坂なおみ選手がBlack Lives Matteと書かれたTシャツを着たり被害者の名前を書いたマスクでアピールしたことが色々な意見を持って様々なメディアに書かれたことを思い出した。
でもこういう物語を読むと、彼女のような有名人がそう言う目立つ事をすることの恐さがなかったはずがない、それを彼女は克服して、それでも自分が出来る事として行った行為だったのだなあと改めてその勇気の素晴らしさを思う

イザベラが練習する「ソナチネハ長調 作品36 第一楽章」は
子どもの頃に練習してて、懐かしい
ただの練習曲として弾いて、ミスタッチせずに弾ける事を目指してた時点で私に音楽の才能はなかったな。

肌の色だけで差別される、そんな子供たちの物語が生まれないような世界を望みます
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