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『団地のコトリ』八束澄子


☆☆☆☆
父を亡くし、母と二人暮らしをしている美月は、バレーボールに青春をかける中学3年生の女の子。自分には身寄りが母親しかいないのだと不安になることはあるけれど、部活の仲間たちや同じ団地に住む愛梨に囲まれて、ひとりの中学生として、幸せな毎日を送っている。
ある日、家で飼っているインコのピーコが逃げ出し、階下の独居老人・柴田のじいちゃんが住む部屋の窓辺に挟まっているのを発見する。じいちゃんに助けてもらおうと声をかけたとき、そこにいるはずのない女の子の気配を感じて……。
居所不明児童の問題を、中学生の少女の視点から描いた著者渾身の意欲作!
居所不明児
丸山正樹さんの漂う子を読んだ時にその後書きで
2011年時点で約1500人もいたということ
その後顕在化して調査を行い所在が明らかになった児童がその数からはぶかれ少なくなっているが
国を挙げての調査に漏れる子ども達が今も一定数いるという事を知った

児童書も貧困をテーマにしたものが結構出されていていくつか読んだけれども
居所不明児童を描いた児童書は私は初めて読んだ

美月の母は保育士、好きな仕事を頑張るお母さんだ
父親は美月が4年生の時に急死し二人暮らし
祖父母もいないので、母だけが家族で、疲れた姿を見ると美月はとても不安になる
背が小さく、バレーボールには不利な美月だが
新しくきた顧問の先生にセッターに向いてるかも、と言われ張り切り努力する頑張り屋の女の子でもある

美月の毎日と同時に語られるのが、ひっそりと部屋に隠れるように暮らしている女の子の独白パート。
美月が飼っているインコが逃げて、団地の下の階の柴田のじいちゃんの部屋の網戸に引っかかった事があった
じいちゃんにはずしてもらったのだが、その時に部屋の奥に人影を見て、誰だろう・・
と思いながらも美月の日々は過ぎて行く
練習試合で初めてサービスエースをとれて嬉しい気持ちや
予選を勝ち抜き県総体へ駒を進めての緊張した試合や
違うクラスだけれども幼なじみの愛梨がみんなにシカトされている事を聞いて
思わず会話を合わせてしまった自分に苦しくなったり
愛梨の家は両親が店をやっているので忙しく、愛梨が4人の弟や妹の面倒を見ている
その面倒見の良いおせっかいな所が嫌われたのだ

初めて見てから2ヶ月経って細く開いた窓から一瞬見えた少女の顔に
学校には行っていないのか、と美月は不審に思いながらも
きっと親戚だろうと思い込んで、また日々は進んでいく

隠れ住んでいる少女の

じいちゃんが帰ってこない。

と始まる文章に、胸がドキドキする。
これはひどい事になりそうって。
少女と一緒にかくまわれている少女のママも
見つかる事を恐れて、少女を外に出そうとしない

柴田のじいちゃんを見なくなって1ヶ月
美月の母親が噂を聞いてくる
くも膜下出血で買い物中に倒れ、入院して意識不明だと。
美月は、じいちゃんのアパートから微かに聞こえる歌声に
窓を叩くが、だれも出てこない

その向こうで、倒れたままの少女のママは
「だめ・・・いっしょにいられなくなる・・・だめ」

美月はまた、離れて1週間受験勉強の日々に向う

美月には美月の毎日がある
中学生にとって受験は一大事だ。
それでも、思ってしまうのだ
どうしてもっと早くに大人を頼らないのかと。
せめてお母さんに。

お母さんは、学校に行っていない子どもが柴田さんの家にいるらしい事を娘から聞いていたのに
何も出来なかったのか
柴田さんがその地区で頼りにされるような人だったから余計に、
親戚の人が来ているのだろうと思い込もうとしてしまったのだろうけど。

柴田さんは自治会長をして、子供たちの事を思う正義感のある人だったはずのに
奥さんを亡くして寂しくしていたからといって
なぜ、子どもを学校にも行かせない日々を許してしまったのか
公的な機関に繋ぐ事だって出来たはずの人なのに。
年をとって、判断が鈍くなってしまったのか

子どもを養育する能力に欠ける母親
こうなるずっと前に、彼女達親子を助ける事はできないのか

公的な福祉の脆弱さが思われて
少女のこれからに希望の光を見せているけれど
今もいるだろう見えない子供たちの現実になんとも辛くなる

私たちは、弱い立場の人にこそ寄り添う政治を求めなければいけないなあ。
「自己責任」なんて突き放しちゃいけない
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