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『ワンダフル・ライフ』丸山正樹


☆☆☆+
事故で重度の障害を負った妻(49)を自宅で介護している「わたし」(50)。なんのために、こんなにも自由のない生活を続けているのか……「わたし」の物語と、さまざまな悩みを抱える男女の物語が絡み合い、繋がるとき、慟哭の真実が明かされる――
私と妻 「無力の王」
何のために、誰のために、何で自分ばかりが、やってられない・・という言葉が頭の中で渦を巻く「私」は
妻の手足となると決めた8年前
仕事を辞めヘルパーに入ってもらいながら事故による頸髄損傷の妻の介護をしている
「ありがとう」という言葉のない不機嫌な妻
妻には内緒で、有料記事の文章を書いてネットにあげている。
将来これで食べて行けたらと淡い夢を抱いて。

摂と一志 真昼の月
摂は女性誌の編集者、一志は設計事務所に勤めている
三十後半になって、
結婚前から子どもはいらないと言っていた妻の摂に
子どもが欲しいと切り出した一志
一年の期限を区切って、不妊治療はしない、という約束で
けれど子どもは出来ず
一志は今度は二人の家を作ろうと提案
一志のひいた図面に子供部屋がないことに気づいた妻に言われたのは
養子をもらうこと。
毒別養子縁組制度について、というパンフレットを渡される
養子を選ぶ事は出来ず、障害があっても受け入れる、という点で言い合いとなり・・

岩子(岩田)と洋治 不肖の子 
直属の上司洋治との不倫
洋治の父親が脳梗塞で入院し、
自然と連絡が来なくなる中、
仕事で知り合った国枝と付き合い始める

GANCOと照本俊治 「仮面の恋」
ネット上で知り合った二人
好きな映画の話で盛りあがり
女子大生で福祉サークルに入っているGANCOからメールでやり取りしようと誘いがくる
GANCOの一番好きな映画は
「素晴らしき哉、人生!」
照本はネットでのプロフィールに福祉関係の仕事をしている、と書いていたが
実は脳性麻痺で介助を受ける側。
わりと自由に動く右足を使って
文字盤でコミュニケーションをとったりパソコンを使いこなす
写真が欲しいというGANCOに
介助者の浅田祐太と写っている写真を送り
一度会いたいというGANCOの誘いに
祐太に照本として
自分と彼女と一緒に映画を見に行ってくれるように頼みこむ

介護の事
介護疲れでの家族に寄る障害児への殺人事件
障害者への差別や偏見
排除アートの事
養子について

現実の出来事を参考にして書かれている部分も多くて
物語で描かれるそういう社会の中にいる
障害を抱える人の人生、といものが
何度も自分はどうなのだと心に問いかける
偏見とか差別とか

「公園に限らず、駅前や公共施設の周辺なんかに、最近妙にこじゃれたオブジェができてるだろう?あれなんかもほとんどが排除アートだ。意図してそういうものをつくってるんだよ。ホームレスだけじゃない。子どもがスケボーなんかで遊べないようにしたりな。けどそうすることによって、車椅子の人や年寄りなんかにとっても通りにくい、歩きにくい環境になってる」
「・・・でもそこまでして、奴らは社会から異物を追い出そうとしてるんだよ」
「行政だけに限らないんじゃないか。無意識のうちに、俺たちもそういう風に動かされてるんじゃないか?それこそ『人々が自発的に一定の行動を選ぶように誘導』されて、な」
(129)


 今のところ、自分たちは、世間一般の人たちにとって「異形のもの」なのだ。偏見や差別以前に、そもそも「自分たちの世界に存在しない者」なのだ。それゆえ、出会うと恐れ、忌避しようとする。
 だからまずは、自分たちが間違いなくこの世に「存在する」ということを世間の人たちにわかってもらわなければならない。障害の種類や程度にかかわらず、「あなたたちと同じ人間」としてこの世界で生きているのだと。

(177仮面の恋 俊治)


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