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『詩人になりたいわたしX』エリザベス・アセヴェド


☆☆☆
詩で描く家族と恋と友情の心揺さぶる物語

主人公のシオマラは、神さまのことなんか、ぜんぜん信じてない。
「女の子は、いけません。いけません。いけません」
信仰心厚い母親に、こう言われるたびに、
「自分はなんてちっぽけなんだろう」って感じるんだ。

ハーレムに暮らす少女シオマラは、厳格な母親に猛反発しながらも、「言葉」の持つ世界に惹かれていく。
高校のポエトリースラム部で詩のパフォーマンスというものを知り、自己表現の世界にどんどんのめり込んでいく。
「言葉は、ありのままの自分を解き放つ手段」、そのことに気がついたシオマラは、いろいろなことから自由になれた。



【編集担当からのおすすめ情報】
本書は、作者にとっての2作品目となります。
全米図書賞、ボストングローブ・ホーンブック賞、マイケル・L・プリンツ賞、カーネギー賞と、大きな児童書の賞を総なめにした話題作品です。
読者が選ぶ賞も数々受賞していることからも、いかに読者から支持されているかがわかります。
全編、詩で描かれているために、心に直接響くのかもしれません。YA世代から、大人まで、勇気づけられる物語です。
シオマラはもうすぐ16歳になる移民二世の女の子
両親はドミニカからの移民で
母親はとても働き者で信仰心に厚い
シオマラをその信仰の中に押しとどめようと必死な母親
双子の兄の事をシオマラはツインと呼ぶ
ツインはエリート校の特殊高校に入っている
静かで賢いツインから貰ったノートに書く日記のような詩が彼女を解放し、彼女を慰める

ときどきわたしは自分の気持ちに詩という服を着せる。(49)

そこには、彼女の不安や、不満、疑問、彼女自身の心が描かれている

たぶんわたしは年とともに
  わかりはじめてしまったんだと思う。
     自分みたいな女の子に対する教会の扱いがどうもおかしいってことに。

ときどき感じることがある。
  わたしの価値はスカートのなかにしかないんじゃないかって。
     耳と耳のあいだにあるんじゃなくて
(19)

書く事で自分が守られる、と感じるシオラマ。

家の中を手伝うのは衣女の子の仕事、と言われる事
男の子達からの、ときにはいい大人からのセクハラ
神様に対する不信
肌の色の事

戒律に耳を傾けることが、自分の声に耳を貸さないよう
がんばることになるのはなぜ?
(69)

それはこういわれたとき。
女の子はいけません。いけません。いけません。
それはこういわれたとき。
待ちなさい。やめなさい。いうことをききなさい。
(71)

それは教会をみまわしたら、
描かれた天使もキリストもマリアも十二使徒も
だれもわたしと似ていなかった時。
肌が浅黒くて大きくて怒りっぽいわたしに。

それはこういわれたとき
父と   子を  信じなさい。
つまり  男を  信じなさい。
 (72)


学校でスポークンワードポエトリー部の勧誘チラシに強烈に心惹かれたのに
その活動曜日が教会のクラスに行かなければならない曜日
この教会のクラスに娘が行く事を母親はとても大事な事と思っていて
それをさぼるなんて考えられない。
この部の担当のガリアーノ先生は授業でシオマラ達に
舞台で詩の朗読のパフォーマンスをするビデオを見せる
スラムという詩の競技会がある事も

生物の授業でペアとなった男の子アマーンに対する思い
惹かれていく気持ち
アマーンは父と二人暮らし
シオマラがアマーンに母親の事を聞いた事の答えは印象的
アマーンの父親が先にアメリカに来て、その後二人を呼び寄せたけど、母親は来なくて
「いつ来るの?」と電話で何度も聞いていたけれど

「おれはもう、怒らないことを覚えてしまった。
だれかを愛するいちばんの方法が
その人を自由にしてあげること、っていうときもあるんだ」
(132)

女性が被ってきた不幸(や不利)の数々の重みが(就学中でも妊娠してしまうとか)
女の子を箱に入れておかなければ危ない、という社会の方が
おかしいのだけれど、女の子に盾(堅い守り?)を持たせることの方が大切、と考えてしまった事が
シオマラの母を頑にさせている
多分彼女が自分を守る盾にしてきたのが聖書の教えだったのだろう
娘を信仰の道に入れて守りたい気持ち。
それがシオマラにとっては自分を殺す重しになり
自分の思いとは別の方へ向おうとする娘に母の行動はエスカレートして・・

シオマラの幼なじみで親友のカリダーの友情がとても温かい

作者もドミニカからの移民の両親を持つニューヨーク市出身で
この物語のシオマラと同じく、スラムの舞台に立ち、優勝した事もあるそうで
自分と重ねて描いている部分があるよう。

YA作品らしく明るいラストで
物語の中で存在感の薄かった父までもが変わりはじめたのが印象的。
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