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『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒


☆☆☆☆
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇。
以来、深海の悪夢に苦しみながら生きてきた橘樹(たちばな・いつき)は、ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉桜太郎のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が刻々と迫り……
『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽小説”!
(出版社紹介)
音楽教室とスパイ、とは意外な組み合わせに感じるが
音楽の著作権を管理する団体の職員が、音楽教室の演奏実態の調査のために一般客を装って覆面調査した。そして、その職員が裁判で調査内容を証言したという実際の事件が題材となっている

主人公は、全日本音楽著作権連盟、通称・全著連の職員である二五歳の橘樹(たちばないつき)
子どもの頃チェロを習っていた経歴を認められて
新しい上司である塩坪信宏から
「ミカサ音楽教室に生徒として在籍し、レッスンを受け、そこで見聞きした情報を法廷で証言してもらいたい」と言われる。
ミカサ率いる「音楽教室の会」が
音楽教室での演奏には著作権が及ばないことを裁判所に訴えるらしい、ということで。
二年限定でやむなくスパイの役目を引き受けた樹は、東京・世田谷区の二子玉川にあるミカサ音楽教室に週一で通いだす。
樹の担当講師は樹より二つ年上の浅葉桜太郎。ハンガリー国立リスト・フェレンツ音楽院卒業で、とてもフレンドリーで教えるのも熱心な先生で、樹は欺き続けるの難しそうと感じながら
仕事は公務員だと偽り
クラシックではなく、ポップスを弾きたいと申し出
ボールペンを模した録音機をセットする。

樹は長く不眠で心療内科にかかっている
12年前、チェロ教室の帰り道、誘拐されかけチェロは壊れ、怒った祖父に燃やされてチェロはやめた
そしてその後、真っ暗な海のような所に引きづり込まれるような悪夢を見るようになっている。

浅葉は教え子たちと月一で、行きつけの二子新地のレストランで懇親会(浅葉先生を囲む会)を開いている。そこへ樹も参加するようになり、
チェロ上級仲間たちと仲良くなって、ずっと孤独だった樹にとっても心地よい場所となっていく。

レッスンのたびに音声データを取られている事をしらない浅葉

浅葉や他のメンバー達との交流が、樹の心を重くしていく
教室の発表会のために、浅葉が樹に選んだ曲は
「戦慄き(わななき)のラブカ」
スパイ映画で使われた曲で、ラブカは醜い深海魚の名前

浅葉や囲む会のメンバー達のやり取りは温かい。
発表会の緊張感は、羨ましいようなドキドキで
これは仕事との往復のような毎日では、失ってしまう時間だ。

2年近くの月日は流れ、
橘がレッスンをやめようと伝えようとした時
浅葉が「コンクールに出ようと思う」と告げられる
浅葉が出る予定とする全日本音楽コンクールは国内最高峰のコンクールのひとつで、若手音楽家のと龍門としてその名を知られている。チェロ部門に出場出来るのは29歳までで、浅葉には最後のチャンス

調査報告書をまとめた橘は上司の汐坪に
法廷でミカサの講師と顔を合わせる事になる、と言われる
浅葉にどう思われるか、
コンクールに挑戦しようとしている浅葉に影響を与えてしまうのではないかとの畏れ

ドキドキしながら読みました。
著作権の事もわかりやすく書かれているし
橘が人との交流を深める程募る罪悪感や緊張感にハラハラして
楽しみのために練習する音楽の魅力も堪能できる
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