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「鏡の偽乙女ー薄紅雪華文様」 朱川湊人

鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─鏡の偽乙女 ─薄紅雪華紋様─
(2010/08/26)
朱川 湊人

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☆☆☆☆
内容紹介
あの男は、もの言う幻だったのかも知れぬ――。
気鋭の直木賞作家が描く、怪奇小説の傑作!!

大正三年、東京。
画家を志し、家を飛び出す槇島風波(まきしまふうわ)。
闇を幻視する美貌の天才画家、穂村江雪華(ほむらえせっか)。
根津、蟋蟀館に集う異形の面々。
変わりゆく帝都を彷徨う未練者(みれいじゃ)たちの怪異。

続篇が切望される好シリーズである。―東雅夫氏

―千街晶之氏書評より―
全く架空の人物、歴史上実在した人物、明らかに実在の人物をモデルにしてはいるが虚構の人物など、さまざまな位相のキャラクターを同一時空に存在させることで、本作は虚実双方にまたがった大正時代のパノラマの様相を呈している。歴史と虚構を組み合わせ、更に人間界と霊界をも自在にシャッフルして眩惑的な世界を現出する技巧は、精緻な寄せ木細工を連想させるものがある。大長篇と短篇集というスタイルの違いこそあれ、本作は荒俣宏の『帝都物語』の系譜に連なる “東京幻想”小説の豊かな成果と言えるだろう。
5話の連作短編。
この著者ならではのノスタルジックな雰囲気。
今回は昭和ではなく、大正。
主人公の風波は、大正3年、家を出だその日に
妙な男に出くわす。
この出会いのシーンが印象的。
難儀しながら歩く雪の坂道の真ん中に、
足跡を見つけ、風波はその足跡の上を歩き出したが、
その足跡は突然大きく右にそれ、かに歩きのように?
そしてその先足跡が消え、振り向くと、後ろに後ずさった跡。
奇妙な動きは続き、それを不思議に思いながら、
足跡通りに踏みなぞる風波。
想像するだけでおかしいし、風波とともに不思議がる私。
そして出会ったのが雪華。
「この足跡は、あなたのものですか?」
「えぇ、ちょっとした実験なんです」

雪華はあちらの世界が見える人で、風波は雪華と出会ってから、不思議な体験をするようになる。
第1話は「墓場の傘」
墓石の上に漂う灰色の平ぺったいもの。
雪華が自分の書いた絵を頭上に放ると一つが近づいてきて、
紙とふれあい、ぱっと消える。
それは、この世に未練を残している死霊だという。
雪華は死霊供養をしていたのだ。

「鏡の偽乙女」
雪華と親しくなりたい風波は彼の住んでいた蟋蟀館に下宿を換える。
風波の部屋には死んだはずの以前の借りての男が未練を残し現れる。
雪華にいわれて「鏡供養」をすることにした風波。
鏡に幽霊の姿を描いて、幽霊がその姿を見れば自分が死んでしまったことを理解し
行くべき道へ行くらしい。
死んでしまったその男とは、友人の下宿に行ったときに火事に巻き込まれ亡くなったのだが
心が女性だということに悩んでいた青年だった。
そこで、風波は美しい女性の姿で描いたのだが、鏡は粉々に砕け散る・・

「畸譚みれいじゃ」
雪華の友人の絵描き志望の若者平河惣太を訪ねた先で出会った不思議な出来事。
惣太の住む家の近くにいる少女おフウの父親が急にいなくなったことを知らされ、
母親に事情を聞きにいくと、その父親は5年も前に亡くなっていることがわかる。
じつは今までいた父親は、みれいじゃ(未練者)として仮の命を与えられていたのだ
みれいじゃとは、死んでも死にきれぬ強い執着を持つものが
人知を超えた何者かによって、体を与えられ普通の人間と変わらぬ姿で存在するが、
その死を知られると生きてはいられなくなる。(おフウの父親は山で白骨死体となって発見されたので生きていられなくなったのだった)。
娘と妻をまもりたいという父の思いが切ない物語。

「壺中の稲妻」でも“みれいじゃ”が出て来る。
風波の親戚の栄作さんが若いときに憧れていた人が14年前と全く同じ姿で現れ
虜になってしまったという美青年。
実は加納惣三郎という土方歳三に粛清された人物で、
彼をずっと追っていたと言う元新撰組の老人に斬られるのだが・・

「夜の夢こそまこと」でもみれいじゃになってしまった若い女性奇術師。
その頃大人気の「松旭斎天勝」の偽者「松九斎天勝」として舞台に立っていた女性。
彼女がなぜみれいじゃとなったのか・・これも切ない物語。

人の心や命の儚さ切なさが全編に漂う物語でした。


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1 Comments

藍色

いつものことですが、登場人物が個性的でわかりやすく、一日で読み終えてしまいました。
ゾクゾクするほど好きな世界観でした。ぜひシリーズで読みたいです。
トラックバックさせていただきました。

  • 2012/12/14 (Fri) 16:45
  • REPLY